おかみね

岡峯古墳

 1964年に下市町の公営住宅の建設に伴い、奈良県文化財保護委員会(現文化庁)から貴重な古墳であり、保存するよう要請されたのですが、無視する形で、下市町長から宅地計画の届けが提出され、奈良県教育委員会と下市町で共同調査が行われました。その結果、当時県下で初めて石室内に造りつけの石棚が確認されるなど、資料的価値の大きさが認識され、保存処置が取られ危うく破壊を免れた古墳で、1966年には奈良県指定文化財となっています。緑泥片岩の独特の色合いの狭い石室内に足を踏み入れると、もうそこはもう別世界!見慣れた花崗岩の石室ではないこの色合いは、新鮮な感動をおぼえると思います。羨道部を過ぎると一旦狭くなりますが、これが前道という部分で、いったい何の為にあるものなのか、その目的は不明ですが、これ又独特です。そして羨道部より床面が落ち込んだ玄室に入ると、そこには噂の石棚と箱型石棺が・・・感激です。ここから見る開口部の雰囲気も最高です。石室に入ってこんなに興奮したのは牧野古墳以来でした。20~30分石室内にいたでしょうか?教育委員会の方にあまり待っていただくのも悪いので、出ましたがこの雰囲気は最高でした。皆さんにも是非お勧めしたい古墳です。 ふだんは施錠され石室内の見学は下市町教育委員会の許可が必要です。

おすすめ度(☆5.0)

★所在地:吉野郡下市町阿知賀

★墳形:円墳(径15m、現状4.5m)葺石あり。     

★石室:両袖式横穴式石室(全長6.05m、玄室長2.9m、幅1.9m、高さ2.2m、前道長0.8m、羨道長2.3m、羨道幅1.08m)ほぼ西に開口。緑泥片岩の割石を小口積みにして構築。

★棺:玄室に緑色片岩の板石を組合せた箱型石棺、石棺の前に木棺もあったようだ(釘の出土より)

★出土遺物:石棺内から金銅装単龍環頭太刀、石棚の上から須恵器杯蓋と鉄鏃、石室内から素環頭金銅装黒漆太刀、鉄鉾等の武器類、鉄斧刀子等の工具類、金環やガラス玉などの装身具、須恵器、土師器

★築造年代:6世紀後半

★発掘調査:1964年 

★被葬者:? 

★奈良ソムリエ検定テキスト掲載古墳

 

メモ

玄室と羨道の間に前道を持ち玄室の奥壁に石棚をもっている珍しい構造。石棚は県下では三里古墳、槇ヶ峰古墳など数例しかないが和歌山県、紀ノ川流域に多いことから紀氏との関連が指摘されている。石室内は盗掘を受けていたにもかかわらず出土遺物が割合多く中でも環頭太刀はレントゲン撮影で我が国最古の唐草文様が発見されている。  

 

【参考文献】

・岡峯古墳(小島俊次氏 )

・日本の古代遺跡6 奈良南部(楠元哲夫氏)

・考古学点描(河上邦彦氏)

・遺物が語る大和の古墳時代(泉森皎氏・伊藤勇輔氏)

・大和の古墳を語る(伊藤勇輔氏ほか)

・大和の古墳Ⅰ 奈良盆地周辺の古墳(泉森皎氏)

 ・平群・三里古墳 奈良県史跡名勝天然記念物調査報告第33冊(橿原考古学研究所)

 

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