しょうぶいけこふん

菖蒲池古墳

 昭和2年に既に国史跡に指定されるなど終末期を代表する古墳の一つですが、近年は開発の波にさらされ古墳周辺は改変が著しい状況です。現在、古墳は世界遺産がらみで断続的ではありますが発掘調査が実施されています。石室は保護用の建屋から格子越しに覗く形になっており、世界遺産を目指すのはいいとしても、見に来られる方にもっと気配りが欲しいところです。早い機会に石棺の保護を含めた石室内の整備と周辺の保護が望まれます。

おすすめ度(☆4.5) 

★所在地:橿原市菖蒲町(町名はこの古墳から命名されています)

★墳形:一辺30m、高さ5m以上の2段築成の方墳又は多角墳。2010年の発掘調査で南側で墳丘裾部分が見つかった他、北側及び東側では1段目のテラス面が検出され2段目に立上がる部分に、終末期の古墳としてはあまり例のない、墳丘面の仕上げと思われる幅40㌢、高さ30㌢の石列(基底石)が直線状に並べられている事が判明しました。また部分的な発掘の為、コーナー部が検出されておらず現時点では方墳又は多角墳と考えられています。尚、古墳の斜面は貼石ではなく赤褐色土が入った土嚢を積み上げた後に表面を削って土嚢の中の赤褐色土が見えるように仕上げられている。橿原市教育委員会の推察では築造当時は「赤褐色の斜面に灰色の石が帯状に巡る「赤」と「白」の色のコントラストが美しい古墳だったかもしれないという事です。

★石室:墳丘の基底面に築かれた南に開口する両袖式横穴式石室で石室は羨道部が埋まっており全長等不明ですが、玄室の現存長は7.2m、幅2.4m、高さ2.2mで2棺合葬を前提につくられており、一般的な大和の大型横穴式石室における長さと幅の比率は長さ:幅=1.8:1程度に対しこの古墳は2.7:1と長い。又、石室は花崗岩の巨石を2段積みにし下段は垂直、上段は内傾する構造で、漆喰が目地の他に石室内面にも塗られています。これは石材の凹凸をなくし切石風の効果を狙ったものと考えられます。

 

★棺:刳抜式家形石棺(凝灰岩)2棺あり共にに四柱造りの屋根形で、多少細工が異なりますが、両棺とも石棺内面に赤漆が何重にも塗られ3~5㎜もの厚さがあり、外面にも塗られていた可能性が考えられています。

★出土遺物:不明

★築造年代:7世紀中頃

★発掘調査:2010年ほか

★被葬者:蘇我倉山田石川麻呂説 

★奈良ソムリエ検定テキスト掲載古墳

 

【参考文献】

・大和の終末期古墳(河上邦彦氏) 

・飛鳥を掘る(河上邦彦氏)

・大和の古墳を語る(泉森皎氏ほか)

・日本の古代遺跡 奈良飛鳥(菅谷文則氏)

 

 

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