低丘陵地にある古墳で、規模的には全長31mの小さな前方後円墳ですが、宇智地区では最初で最後の前方後円墳。方墳の多いこの地域では注目される古墳です。周濠跡の痕跡も確認できますが、現状は後世の開墾でかなり変化しているようです。墳丘の上にも登ることも出来ますので、墳丘図を持参の上、見学すれば、この古墳の持つ意味合いを若干なりとも味わう事ができるかもしれません。尚、副葬品の多くは五條市立博物館で所蔵されています。
★所在地:五條市今井町
★墳形:前方後円墳で前方部を南に向ける。(現状規模は全長約31m、後方部径約19m、 高さ約3.5m、前方部幅約19.5m、高さ2.5m)2段築成、葺石と円筒埴輪列が確認されている。周濠跡あり
★埋葬施設:後円部の頂上に南北に主軸を置く2基の竪穴式石室を持つ。
・第1石室(東石室)は先に作られた石室で上記の横断模式図のように2段の墓壙を掘り下段に割竹形木棺を据付後、上段を内法長2.9m、幅0.8mの板石で覆っている珍しい石室構造を持つ。
・第2石室(西石室)は、第1石室とは異なり、通有的な石室事体を墓壙の底部から緑泥片岩を小口積で積み上げる方式で内法は長さ2.8m、幅0.75m。盗掘でほぼ破壊されていた。
★出土遺物:埴輪(円筒、家形、蓋形)
第1石室・・・細線式獣帯鏡1、碧玉製管玉、メノウ製勾玉、ガラス製玉、鉄刀。
第2石室・・・鉄刀破片、
前方部土坑・・・鉄剣、長頸鏃、鋲留短甲、衝角付冑、頸鎧。
★築造年代:5世紀中頃
★発掘調査:1983年(遺跡保護のための調査)
★被葬者:武具の出土が多いことから武人的性格の強い被葬者であろう。
メモ
・五條地域では数少ない前方後円墳である。
・後円部の2基の埋葬施設(おそらく2世代)に加え、前方部にも撹乱されていない長方形の土抗が見つかり、多くの武具が発見された。
【参考文献】
・五條文化博物館 令和2年度秋季企画展「五條の古墳を掘る」解説文集
・今井1号墳 発掘調査概報
・日本の古代遺跡6奈良南部(楠元哲夫氏ほか)
・吉野川紀行 橿原考古学研究所付属博物館 春季特別展
行き方