ひがしとのづか

東殿塚古墳

 西殿塚古墳の東側に並行して築かれた前方後円墳です。前方部の下段裾の葺石基底石列周辺に、祭祀空間的造りだし遺構が発見され、特殊器台型埴輪と特殊壷が一体化した朝顔型埴輪や、特殊な形態の鰭付円筒埴輪なども出土しています。中でも鰭付楕円筒埴輪には船の線刻絵画が描かれており、被葬者の船運も含めた広い範囲の交流を物語っており注目されます。巨大な西殿塚古墳の影に隠れ盆地側から墳丘が見えにくい為か、訪れる人も少ない古墳ですが、冬場には墳丘上にも登れる時もありますので、船の線刻絵画を思い浮かべながら古代ロマンに浸ってみるのもいいかもしれません。

おすすめ度(☆3.0) 

★所在地:天理市中山町

★墳形:前方後円墳(全長139m、後円部径65m、前方部幅49m)前方部先端は後円部径とほぼ同じ迄、開く前方部が長いタイプ。(近くの燈籠山古墳もこのタイプです)埴輪、葺石あり。前方部西側の下段墳丘裾から掘割に向け突出する祭祀の場と思われる造り出し状の突出部あり。

★埋葬施設:未調査であるが墳頂部に割石や自然石が散乱しており竪穴式石室と思われます。

★出土遺物:鰭付円筒埴輪、特殊器台形埴輪等。2010年8月の(天理市)夏の文化財展に東殿塚古墳の船の線刻絵画が公開されていました。予想以上にくっきり線刻が残っており感激ものでした。(上記写真参照ください)

★築造年代:4世紀前半

★発掘調査:1977年(測量)1993、1996年(前方部西側の墳丘から外堤にかけて)市教育委員会

★被葬者:不明  


こんなん知ってますかぁ?

この古墳は下段の自然地形を長方形に整形された全長175mの基底部の上に前方後円形の墳丘が乗る特異な形状で、書物によってはこの自然地形の下段の分も考慮し、全長175mとしている資料もみられます。パッと見ではわかりにくいかも知れませんが、よく目をこらしてみてみると確かに長方形の段の上に前方後円墳が乗っかかっているのがわかるかと思います。尚、前方部西側に造り出し状の突出部(左図の緑色)があることが1996年に判明しましたが、おそらく祭祀場として用いられたと考えられ、ここから葬送の船とみられる船3隻を線刻したひれ付き埴輪などが出土しています。


【参考文献】

・天理の古墳100(天理市教育委員会) 

・山の辺の道の遺跡を訪ねて(天理市教育委員会) 

・大和の古墳Ⅰ 大和における前期古墳の立地と構造(泉武氏) 

・石の考古学(奥田尚氏)

・日本の古墳と天皇陵-西殿塚古墳をめぐる諸問題(泉武氏)

 

 

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