いちおみやづか
近鉄吉野線市尾駅から徒歩10分、天満神社の裏側のひっそりとした場所にある前方部を東に向けた前方後円墳です。一見、円墳かと思ってしまう感じです。現に昭和40年発行の小島俊次著「奈良県の考古学」では径15mの円墳と紹介されています。古くから知られた古墳で昔は自由に出入りできたようですが整備後、石室入口は施錠されています。しかし石室に近づくとセンサーが働き石室内がライトアップされ一瞬、息を呑む感じで石棺が浮かび上がってきます。コレにはビックリしました。尚、見学時に、気が付きませんでしたが玄室及び石棺の内外面に赤色塗料が塗られていますので見学時は注意深く観察してください。石室内に入る事が出来来たら、その素晴らしさを実感できると思うのですが、朱が塗られている事や、石棺が傷んでいる事から致し方ないのでしょうか。
おすすめ度(☆4.5 ・但し石室に入れれば)
★所在地:高市郡高取町市尾
★墳形:前方後円墳(全長44m)後円部径23m、前方部幅23.5m。
前方部を東に向ける。
★石室:後円部中央に北北西方向に開口。両袖式横穴式(全長11.6m)玄室長6.2m、幅2.5m、高さ3m,羨道長5.4m、幅1.5m、高さ1.8m。玄室の床面が羨道部よりも1段低く壁面及び石棺の内外面には赤色塗料が塗布されている。
★棺:二上山の凝灰岩製家型石棺、長さ1.9m、幅1.2m。木棺→1棺以上追葬の可能性あり。
★出土遺物:盗掘されているにもかかわらず豊富で 武具、武器、鞍縁金具、馬具、装身具、柄頭等が出土。
★築造年代:6世紀中頃
★発掘調査:1997年(高取町・橿考研)
★被葬者:巨勢氏(市尾墓山古墳の次代の首長)
★奈良ソムリエ検定テキスト掲載古墳
【参考文献】
・ヤマト王権と葛城氏(近つ飛鳥博物館)
・継体天皇とヤマト(橿原考古学研究所付属博物館)
・古墳の被葬者を推理する(白石太一郎氏)
・大和の古墳を歩く(森下恵介氏)
・日本の古代遺跡6 奈良南部(楠元哲夫氏)
斑鳩町の国史跡「藤ノ木古墳」の石棺は、かなり特徴的ですが、その特徴のひとつに棺の東側が幅が広く、また高いことが知られています。これは中期の船形石棺や長持形石棺でもこのような傾向が認められています。これは人体の最大幅は上半身の肩の部分であるという事と関係するかもしれません。しかし家形石棺では、このような傾向はむしろ特殊で家形石棺では権現堂古墳(御所市)が高さでその傾向が見受けられる(幅に変化はなし)程度です。この市尾宮塚古墳は棺身でしか全形を確認できませんが棺内の幅を見ると石室の開口部側の幅が10㎝広くなっていることがわかっています。これは奈良県内では藤ノ木古墳と市尾宮塚古墳のみに見られる現象です。
現在の市尾宮塚古墳の石棺は棺身も棺蓋もついた状態で見ることが出来ますが、調査前は、このように棺身だけの半壊した状態となっていました。結構、上手に復元されており、これはこれでいいにかな?と思ったりしていますが。初めて見る方は気が付かない方が大半でしょうね。
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